るるぶの編集担当者が語る「五島列島 奄美 九州の島々」の魅力

JTBパブリッシングでるるぶの編集を担当している野嵜さん。今回、『るるぶ九州の島々』をリニューアルして『るるぶ五島列島 奄美 九州の島々』を発行することになったきっかけとは。お話を伺いました。

〇今回、新たに『るるぶ五島列島 奄美 九州の島々』を発行することになった背景などを教えてください。

2018年6月に五島列島などが世界遺産に登録される可能性が高いという情報を得て、2018年の2月頃に本書の企画を考えました。2013年以来、実に5年ぶりの発行となりますので、もともと渡航者が多い「五島列島」と「奄美大島」のボリュームを増やし、書名にも加えた形でリニューアルすることになりました。

また、「徳之島」は奄美大島や、沖縄県のやんばる地域などと一緒に世界遺産登録を目指しており、またテレビドラマの舞台にもなって注目を集めておりますので、5年前にくらべると紹介ボリュームを増やし、これから増えると予測される観光ニーズに応えております。

〇特に、読者に注目して頂きたいところなどがありましたらご紹介ください。

今回は、特に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の紹介に力を入れております。遺産自体は、長崎市内の大浦や熊本県の天草などにもありますが、本書はあくまでも「九州の島々」がご紹介範囲です。そのため、「頭ヶ島」「奈留島」「久賀島」「野崎島」に特に力を入れてご紹介しております。初めてご旅行される方でも、重要ポイントを見逃すことなく観光できるように、本書では「注目ポイント」や「潜伏キリシタンとのかかわり」などを教会堂ごとに解説しております。

また、教会堂にあまり馴染みのない方は、そもそもどこを見たらいいのかよく分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういう方のためにも、教会堂の「天井」の様式や「見た目の構造」などの豆知識も掲載しております。例えば、見た目の構造の一つに「煉瓦造り」という建築方法があります。遠目から見ると、レンガを積み上げただけのように見えますが、長い面だけの列、短い面だけの列を段違いで交互に積みあわせた「イギリス積み」、長い方の面をジグザグに積み上げた「アメリカ積み」、など実は違いがあるのです。近くに寄って見ると、その違いは一目瞭然。そういった細かいところに注目すると、教会の見学方法がぐっと変わってきますよ。

〇お気に入りの島はありますか?

「野崎島」です。名前が同じだから…、ということで興味をもったのですが、調べれば調べるほどその魅力にはまりました。まず、ほぼ「無人島」というところからして興味深いです。その歴史やかつての様子などが気になります。また、“東洋のサバンナ”と称される独特の風景も、まるで日本ではないような景色で魅力的です。かつては段々畑だったところが、風にさらされ、現在のような光景になったようです。野生のシカが草木を食み、ところどころ赤土がむきだしになっているのが、本当にサバンナのようですよ。そして、極めつけは「旧野首教会」です。“サバンナ”を抜け、“ゴジラの背中やしっぽ”といわれる軍艦瀬を通り、コバルトブルーの海を見下ろしながら進むと、開けた空間に、赤茶色の教会が突然視界に入ってきます。荒れ果てた石積みの段々畑に囲まれてたたずみ、かつての信仰の歴史を今に伝えるその姿は、威風堂々たるもので思わず目が奪われます。教会の中に入ると、窓ごとに配色が違うステンドグラスが床をやさしく照らします。ステンドグラスをよく見てみると、モチーフは五島列島のあちこちで見られる椿の花です。ちなみに、窓の椿は花びらが4枚です。椿の花は本当は5枚の花びらがありますが、十字架をイメージして花びらが4枚になっているといわれていますよ。

〇るるぶの担当者として、各地の観光地等を訪問されていると思いますが、その中でも、九州の島々の魅力を教えてください。

なんといっても比較的温暖な気候によって育まれた生態系とそこに暮らす人々から醸し出される大らかさが魅力だと感じております。特に自然面では、世界自然遺産に登録されている屋久島や、島に300以上の鍾乳洞があるという沖永良部島、活火山・硫黄岳がそびえワイルドな景観を楽しめる硫黄島など、島ごとの特徴が本当に個性的です。

九州の島は、とりわけ五島列島が顕著ですが、島同士が比較的近いのでアイランドホッピングという楽しみ方ができるのも魅力的です。自由きままに気になる島を渡り歩いてみるのも、楽しいですよ。ちなみに本書では、「周辺の島にはどうやって行く?」といったプランニング情報も満載ですので、ぜひ参考にしてみてください。

〇今回、国や関係自治体等で進めている「国境に行こうプロジェクト」にご賛同頂いたわけですが、国境離島に対するイメージはございますか。

国境・離島というと、どうしても遠く行きづらいイメージを抱きがちだと思います。確かにそのような場所が多いですが、対馬をはじめ、実は長崎市や鹿児島市などから直行便が出ている離島がたくさんあります。「長崎や鹿児島市内の観光+1泊で国境の島へ」という旅の仕方もできますので、ぜひ気軽に旅してみてほしいです。

また、衰え知らずの絶景ブームですが、国境離島はまさに絶景の宝庫!本州ではなかなか見られないような息をのむ景色のオンパレードです。しかも山の景色もあれば海の景色もある。花の絶景もあれば、教会もある、とバラエティ豊富です。写真撮影が好きな方にもたまらないと思いますので、ぜひ足を運んでみてください。

 

野嵜理佳子

JTBパブリッシング国内情報事業部(九州・沖縄エリア編集担当)。「るるぶ五島列島奄美 九州の島々」ほか「るるぶ沖縄」など多くの『るるぶ情報版』編集に携わる。