希少な種類の花の群生を見られるのは、訪れる人が少ない離島ならではの魅力。青い海と空に囲まれた小さな島のなかで、花畑一面に咲き誇る様子はまさに癒しの風景です。シーズンのピークには島じゅうが香りいっぱいに包まれて「花の島」とよばれる離島も数多くあります。
Summery
礼文島固有種のレブンアツモリソウ
ここでしか見られない、レブンアツモリソウ群生地へ
希少種、固有種を含む約300種の高山植物が咲く礼文島。冷涼な気候、冬に吹く強い季節風などの気象条件が重なり、本州では2000m級の山々でしか見られない高山植物が、海抜0~490mという低地でも見られます。なかでもぜひ見ておきたいのが、礼文島のみに生息する野生ランのレブンアツモリソウです。クリーム色の優美な花をつけ、ランの女王とも呼ばれる希少種です。花期は5月下旬~6月上旬。島北部の群生地で観察できます。
佐渡島のトビシマカンゾウの群生
景勝地・大野亀を彩る一面の高山植物
佐渡島の北、海に突き出している一枚岩の大野亀(おおのがめ)は、佐渡を代表する景勝地のひとつです。その大野亀が一番華やぐのが100万本ものトビシマカンゾウの花がいっせいに咲く5月下旬~6月上旬。周辺を黄色い花々が埋め尽くします。このトビシマカンゾウは海沿いの崖のみに生息する多年草で、佐渡島以外では、山形県酒田市の飛島でのみ見られる貴重な種類です。6月の第2日曜には「佐渡カンゾウ祭り」も開催されます。
八丈島のフリージアとストレチア
八丈富士のふもとに広がるフリージア畑
亜熱帯性の温暖な気候の八丈島は観葉植物の栽培が盛んです。昭和半ばに生産が最盛期を迎えたフリージアは、観葉植物生産の代表的な品種です。八丈島空港の近く、八形山フリージア畑には約35万株のフリージアが植えられ、3月中旬~4月上旬に見ごろを迎えます。八丈富士をバックに赤や黄色、白や紫など鮮やかな花が咲き、八丈島に春の訪れを感じさせます。
八丈町の花でもあるストレチア
南アフリカ原産で亜熱帯気候を好むストレチアも、八丈島で栽培されている観葉植物のひとつです。別名「極楽鳥花」とも呼ばれ、鳥のくちばしのような形をしており、鮮やかなオレンジ色のガクと青い花びらをつけます。栽培する農家も多く、島の各所で見ることができます。なかでも、八丈植物公園では鑑賞用の栽培を行い、10~12月に花々を見ることができます。
隠岐諸島・島後のカタクリの花
一斉に咲き誇る、可憐な春の妖精
「隠岐は絵の島花の島」と隠岐民謡のしげさ節で唄われている通り、春になると、島中でいろいろな花が咲き乱れます。中でも3月下旬から4月中旬になると、隠岐諸島の島後の「カタクリの里」では1万株ものカタクリが花を咲かせます。カタクリはユリ科の多年草で、薄紫色の花がうつむき加減に咲く様子は「春の妖精」に例えられる可憐さです。また、ほとんどの花が薄紫色をしていますが、白い花を見つけると幸せになれるという言い伝えもあるので、ぜひ探してみてください。
五島列島・福江島の玉之浦ツバキ
赤い花びらを白く縁取った幻の椿
赤い花びらが特徴の五島椿は、冬を彩る花として五島市の花にも指定されています。椿と言っても色やカタチなどさまざまなものがありますが、昭和22年(1947)に玉之浦地区で偶然に発見された椿は、花びらに白い縁があったことから注目を浴びます。椿は挿し木で繁殖できることから、多くの方の手に渡り広がりました。母木は枯れてしまいましたが、子孫がいろいろな咲き方で訪れる人の目を楽しませています。椿の名前に「玉」や「タマ」が付けられた椿は、玉之浦ツバキの子孫になっています。
甑島列島のカノコユリ
甑島の夏を彩る花
カノコユリはユリ科の多年草で、花弁に鹿の子模様の斑点があるのが名前の由来になります。四国や九州、そして台湾、中国にも自生していますが、最大の自生地は甑島です。7月になると島の至るところで甘い香りを漂わせるピンク色の花を目にします。観賞スポットとして下甑島・鹿島の「鳥ノ巣山展望所」が有名ですが、近年下甑島・片野浦の「みっちり百合草原」も人気です。標高が高い場所だからでしょうか、ほかの地域が落花を迎えた後、お盆頃に満開となり、8月下旬まで楽しめます。
屋久島のヤクシマシャクナゲ
開花ごとに変わる色のグラデーションが美しい
九州最高峰の宮之浦岳をはじめ、島の中央に位置する1000m級の山々を島では奥岳といいます。この奥岳に自生する屋久島固有の花がヤクシマシャクナゲです。開花直後は濃いピンク色ですが、盛りを過ぎると薄ピンクから白へと色を変える美しい花です。開花の時期は5月下旬~6月上旬、シーズンにはこの花を見に全国から大勢の登山客が島を訪れます。
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海栗島:対馬・鰐浦のヒトツバタゴ
毎年5月、鰐浦地区のお祭りの時期に1日だけ開放され、約3,000本の真っ白な花のヒトツバタゴの咲き乱れる景色を楽しめる【→海栗島】