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伝統の祭り・神事をめぐる

壱岐島(長崎県)福江島(長崎県)佐渡島(新潟県)西ノ島(島根県)硫黄島(鹿児島県)下甑島(鹿児島県)悪石島(鹿児島県)平島(長崎県)

本土と大陸の両方から影響を受けた離島の祭りや神事には、ほかの地域にはない独特の伝統があります。神に奉納される歌や踊りからは大陸や東南アジアの文化を感じられ興味深く、延々と受け継がれてきた個性豊かな伝統行事は、どれも一見の価値ありです。

Summery

佐渡島に古くから根付く舞の鬼太鼓と薪能

集落で大切に受け継がれる鬼太鼓

険しい表情の鬼の面をかぶり、太鼓の音に合わせて軽快に舞う

五穀豊穣や大漁、安全を祈願しながら集落の家々を回り、厄払いをする鬼太鼓(おんでこ)。佐渡で300年前から踊られていたと記録が残っています。島内の各集落で踊られてきたこの舞は、口伝によってのみ継承されるため、現在約120ある集落の数だけ踊りがあるといわれています。集落ごとの特色が色濃いこの踊りは、田植え前の4月の春祭り、収穫前の9月中旬を中心に各集落で披露されます。

代々継承される能楽を気軽に鑑賞

奉納する神事能として広まり、庶民の娯楽へと独自の進化を遂げた佐渡の能

その昔、能の大成者である世阿弥が流されてきたのが佐渡島。江戸時代に能が広まり、庶民にまで浸透し娯楽として根付いた珍しい島です。日本の能舞台の総数の3分の1、約30の舞台が残っており、現在でも5~10月に薪能(たきぎのう)が屋外で行われています。無料または1000円程度で観られるものが多く、気軽に鑑賞できるのが特徴です。

隠岐諸島・西ノ島町の精霊船送り

盆唄に送られながら青い海を走る隠岐の夏の風物詩

さまざまな色の旗が飾られたシャーラ船は鮮やか!

隠岐・西ノ島町の美田地区と浦郷地区で、毎年8月16日の早朝に行われる送り盆行事の一つが「精霊船送り」。色とりどりの旗を結んだ大きな藁船「シャーラ船」に、5~6人が供物とともに乗り込んで海岸から沖に向かい、盆に迎えた先祖の霊を送り出す隠岐の夏の風物詩です。盆唄とご詠歌に送られながら青い海を滑るように進む船は、本来の精霊送りの感傷を超えて、勇ましさやすがすがしさを感じさせてくれます。精霊船送りを一目見に、足をはこんでみてはいかがでしょうか。

壱岐島の壱岐神楽

壱岐の神職のみに許されている神事芸能

年間を通じて壱岐各地の神社で奉納されている

約700年の古い伝統と歴史をもつ神事芸能で、採物神楽の一種です。壱岐の神社に奉職する神職にしか舞いや演奏を許されていない、とても神聖な神事です。口頭でのみ伝承されており、畳2枚のスペースで舞います。33の演目があり、なかでも他の神楽では見られないアクロバティックな演目が人気です。8月、12月の年2回、所要時間7~8時間かけて大大神楽が行われます。国指定重要無形文化財指定。

五島列島・福江島のチャンココ・五島神楽

情緒あるエキゾチックなチャンココ、五島の風土と文化の中で育まれた五島神楽

島の風物詩となっている伝統的な舞が披露される

五島市を中心に伝わる念仏踊り・チャンココ。「チャン」が鉦(かね)の音、「ココ」は太鼓をたたく音といわれており、帷子(かたびら)に腰みの姿で太鼓を叩きながら踊る様は南方系の踊りを彷彿させます。毎年8月13~15日の3日間で開催されます。
また毎年秋になると、五島のほとんどの神社で奉納される五島神楽も観賞できます。約400年以上の伝統をもち、畳2枚分の板張りの上で繰り広げられる特色ある舞です。国指定重要無形民俗文化財。

五島列島・平島のナーマイドー

祝福されなかった男女の供養を込めた祭り

観音堂から、ナーマイドーの声とともに集落へ降りていく

その昔、島の僧と庄屋の娘が恋仲になったものの村人から許されず、観音堂の岩から飛び降り命を絶ちました。その後、島内で疫病や大火が相次いだため、2人の供養行事を行ったことが始まりとされています。祭りでは大綱を数珠に見立てて「ナーマイドー」と唱えながら島内を引き回し、海に投げ入れ対岸へ運びます。「ナーマイドー」とは、「南無阿弥陀仏」がなまり転じた行事名といわれています。2003年には長崎県無形民俗文化財に指定。

甑島列島のトシドン

子どもの幸せや健康を願う歳神様・トシドン

トシドンと約束した子どもはご褒美に年餅をもらえる

トシドンは大晦日の夜に小さな子どものいる家を訪れ、良いところを褒め、欠点や短所を指摘してもっと良い子になることを約束させ、年餅を授けて去って行きます。下甑町一帯で行われている伝統行事ですが、いつから行われているのか定かではありません。手打麓のトシドンは全身をミノに覆われ、大きな顔に高い鼻、大きく裂けた口と、いかにも恐ろしそうな形相ですが、集落ごとに装束は異なります。昭和52年(1977)に国の重要無形民俗文化財、2009年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

硫黄島のメンドン

神木で人々の悪霊を払うメンドン

手に持った神木で見物人たちを次々とたたいていくメンドン

勇壮な八朔太鼓踊りが終わるとメンドンが現れる

メンドンは、旧暦の8月1・2日に硫黄権現(熊野神社)に奉納する八朔太鼓踊りで登場する仮面神です。慶長3年(1598)に豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、島津義弘に従い硫黄島から従軍した武士が、戦功を立てた凱旋祝として踊りを奉納したのが始まりと伝わっています。太鼓を叩きながらの賑やかな踊りが終わると、真っ赤な顔にぐるぐる模様の耳のメンドンが登場、見物人を追い回し、手に持った神木で悪霊を祓ってくれます。2017年に国の重要無形民俗文化財に、2018年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

悪石島のボゼ

まるで南方の仮面神!? 吐噶喇列島の奇祭・ボゼ

左からヒラボゼ、ハガマボゼ、サガシボゼ

ボゼが人々の前に姿を現すのは15分ほど。あっという間に去って行く

ボゼは悪石島の盆行事の最終日(旧暦7月16日)に登場する来訪神です。赤と黒の縞模様の大きな仮面を付け、全身をビロウの葉で覆われたその姿は、南太平洋の島々の仮面神のよう。盆踊りで人々が集まる広場に忽然と現れ、赤土のついた棒・ボゼマラを手に人々を追いかけ回しますが、この赤土をつけられると災厄が祓われ、女子は子宝に恵まれるといわれています。ひとしきり暴れまわるとテラとよばれる場所へ姿を消し、そこで仮面は壊されます。2017年に国の重要無形民俗文化財に、2018年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。