人の往来が少ない離島では、古い集落や漁村、棚田など、まるで時間が止まってしまったかのような風景に出合えることがあります。時代は進んでも、変わらぬ風景は心の安らぎです。そんな未来に残したい、古き日本を感じさせる景色が残る島をご紹介します。
佐渡島の宿根木集落と棚田
北前船稼業で栄えた宿根木集落の街並み
佐渡島の南、入江のすぐそばに広がる宿根木(しゅくねぎ)は、江戸時代から明治初期に北前船稼業で栄えた集落です。船主や船大工など造船技術者が居住し、船板などを利用した板壁の民家が100棟余り密集して立っています。佐渡の黄金期の趣を感じられるこの街並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。3棟の民家が公開されていて、内部を見学することができるほか、カフェや宿もあります。
江戸時代から開墾された美しい棚田が点在
南北に山地が広がる佐渡では、山間の傾斜を利用して開墾された棚田が多く点在します。約7カ所ある棚田の中でも特に絶景と知られるのが、島の南東にある岩首昇竜棚田です。江戸時代から受け継がれた棚田が現在460枚ほどあり、高台から望む海と青々とした田んぼが広がる様子は、それは美しいもの。田植え前の春に、水を張った棚田に朝日が差し込む景色は見事です。見学の際は田んぼや畦に入らず、農作業の迷惑にならないよう、マナーを守って鑑賞しましょう。
舳倉島の海村集落
昔から変わらないのどかな海村集落を散策
別名「海女の島」とも呼ばれ、海女漁が盛んな舳倉島。島を歩くと海岸には、ケルン(築山)と呼ばれる石積みを随所に見ることができます。これは海が時化ると島が見えなくなることや、海女が潜る場所の位置を確認するための目印とするためのもので、海女達の豊漁の願いが込められているといいます。また、海沿いの集落には古き日本を感じさせる町並みが残ります。屋根の上に縄を置いて、瓦が強風で飛ばされないようにしているのがユニークです。ゆっくり散策して海村ならではの風景をぜひお楽しみください。
隠岐諸島・島後の屋那の松原・舟小屋群
海沿いにずらりと並ぶ「舟のアパート」
隠岐の島町の都万(つま)地区の海岸線沿い100mにかけて建ち並ぶ「屋那の舟小屋」。杉皮葺きの屋根に浜辺の石が乗せられた20棟の舟小屋が整然と並び、背景に山岳信仰の場所であった高田山を望みます。風景は古き漁村風景の面影を残し、「未来に残したい漁業・漁村の歴史文化財産百選」に選定されています。またこの近くには日本の白砂青松百選にも選定されている「屋那の松原」があるので、あわせて足を運んでみるのがおすすめです。
対馬の石屋根倉庫群跡
災害から食料を守るための頑丈な倉庫群
朝鮮海峡に面する地域では、風速10数メートル以上の風が吹くこともあり、災害から食料などを守る建物はとても重要でした。そこで瓦よりも頑丈な分厚い砂岩の板石を屋根に葺いた石屋根の倉庫を形成。さらに高床式にすることで風や火、雨にも強く、火災からの延焼を防ぐため、人家と倉庫は離れて建てられました。椎根地区はとくに人家が山際に一列に並び、中央を流れる川の両岸に石屋根倉庫が群をなす風景が今も見られます。
五島列島・小値賀島の古民家宿
島暮らしを体感できる古民家ステイ
小値賀島では、島で暮らしているかのように滞在してもらおうと古民家ステイを提供しています。宿泊施設は島内のいくつかの集落の中に点在する築100年以上の古民家で、宿泊施設仕様に快適にリノベーションされています。港町の路地に佇む家や、窓から海や港を望める家、田園がすぐそこにある家など、趣ある6棟から選べます。旅をしながら、島の暮らしや文化に身近にふれることができます。
上甑島の里麓武家屋敷跡
素朴な佇まいに心癒される里麓武家屋敷跡
鎌倉時代に甑島を治めていた小川氏の居城・亀城跡の裾にあり、江戸時代には薩摩藩の外城として武士が暮らした集落跡です。海路の往来を監視する役割があったといわれています。ニニギノミコトを祀る里八幡神社(さとはちまんじんじゃ)から奥へ200mほど玉石垣が連なり、静かな里村の雰囲気を楽しめます。また夏にはカノコユリが石垣を縁取る甑島らしい風景も魅力です。令和元年(2019)に「薩摩の武士が生きた町~武家屋敷群・麓を歩く~」として日本遺産に認定されています。
種子島のサトウキビロード
サトウキビ畑の間を走る一本道
サトウキビは種子島の主幹作物で、島全域で栽培されています。国道58号から枝分かれしている道へと進むと、サトウキビ畑を目にします。中種子町野間(なかたねちょうのま)にある「通称・サトウキビロード」は、サトウキビ畑の間を走る一本道の向こうに海が見える、爽快感抜群のドライブコースです。アニメーション映画『秒速5センチメートル』にも登場し、アニメの聖地としても知られています。